おわりの1歩
~東南アジア最高峰でお気軽登山~

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マレーシアのボルネオ島を訪れた。
さっそくこの旅のハイライト、キナバル登山に挑む。
標高4095mで東南アジア最高峰! 1泊2日のアタックだ。
ちなみに登山経験は皆無で、富士山も登ったことがない。

午前9時に麓のキナバルパークに到着し、
入山の手続きを終え、山岳ガイドをアテンドされて出発。
ただ残念ながら英語が話せないガイドで、黙々と彼の後を付いていくしかない。
初日は3500m付近にある山小屋まで登る行程だ。

登り始めてわずか1時間、まず右膝が悲鳴を上げた、、、。
手術は回避したものの、半月板損傷中。
ずいぶん前に登山の手配をしてしまったため、いまさらキャンセルできない!と、強行したがやはりまだ登山はきつかった。
右膝をかばいながら登っていくと、今度は左膝まで痛くなってきた(泣)

キナバルは初心者でも登りやすい山だとか。
たしかによく整備されているが、3500mまではほとんどが岩の階段だった。大小さまざまな岩が飛石状になっていて、足場を確かめながら、ひたすらに登っていく。

そう、標高差2000mを一気に!

膝の痛みに耐えながらそれでも1歩、また1歩と足を前に出す。
鉛のように重たい、、、。
痛みはいつしか鈍さに変わり、心にのしかかる。
見上げればひたすらに続く岩の道。

「何の罰ゲームだ!?」

肩で大きく息をしながら、逃げ出したい衝動と闘っていた。

1歩進むための気持ちを振り絞る!
終わりの見えない辛さを人生と重ねてみる。

「あきらめれば楽なのに…」

生きてく中で、そんな囁きに心が揺さぶられる瞬間は多々ある。
その1歩に意志を込めらるかでこの勝負は決まる!!

次の1歩を刻む。
こんな小さな1歩だけどそれが積み重なってここまで来た。
歩くって人生なんだな…。
そこで歩みを止めてしまえば、未来へはたどり着けないし、
がんばって次の1歩を踏み出せば、
まだ見ぬ世界が広がる。

道は“未知”であり、
未知を辿れば、人生は“満ち”となる。

何日もひとりで歩いていると
することは自己対話のみ。
こんな哲学的な言葉が浮かんで消えていく。

ふと、なんでこんなことをしているのか考えてみた。

誰かに褒められたいから?
誰かに自慢したいから?
強くなりたいから?

うーん、どれも違う。

多分意味はないし、意味を探す必要もない。
ただ、なんとなく。

これが答えだ。

いちいち意味を考えてたら、
世の中ムダなことばかりで何もできなくなる。
なんとなく、でやってみて、
あとから意味がついてこればいいんじゃないかな?

人生でベスト3に入るくらい、辛く長い6時間が過ぎた。
こんなに重たい1歩はないってくらい、何度もえいっ!と踏み出した。

だから、ゴールした感動は言葉で言い尽くせない。

そして、キナバルの空を染めた夕陽は、最高のエールだった。

明日は山頂に挑む。
ゴールも束の間、数時間後にはスタートラインに変わるから無情だ。

同部屋の中国人が薬を1錠くれた。
マッスル、リラッ~クス!
と、説明しながら。
恐る恐る飲んでベッドに潜りこんだ。
たしかに鉛のような身体は楽になった。
ただし、強烈な胃の痛みと引き換えだった、、、。

そして、ほとんど眠れないまま、
出発の時間(午前3時)を迎えることになった…。

~2日目~

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星を目指して歩いている気分だった。

午前2時半、山小屋を出発し、キナバル山頂を目指す。
標高4095m、それは普段着の登山の領域を外れていた。

昨日の岩の階段地獄から一転、今日は壁が待ち受けていた。
山小屋から山頂までは約3kmの行程だが、その大半をロープ片手に壁を登って行くから辛い。
傾斜45度は言い過ぎかもしれないが、星明かりの下、ロッククライミングは正直荷が重かった…。

もし滑ってロープを離したら、暗闇の中、斜面を滑り落ちて死ぬ!
足の親指にチカラを込め、岩をつかむ気持ちで前に進んだ。
昨日よりもさらに1歩の重さを感じながら。

ベッドライトの明かりの列はまるで聖者の行進。
一列になって星を目指して歩いている気分だった。

もう、ホントにここが限界!!!!!

そう何度も呟きながら、それでもわずかな歩幅を刻む。
わずか数センチでも、頂上までの距離を剥ぎ取る気持ちで、
奥歯にチカラを込めた。

何度も休憩し、一口水を流しこんでは、
「エネルギーに変われ!」と、祈った。
動け、この両足!

平らな場所をみつけて仰向けに寝転んでみる。
流れ星が1つ空からこぼれた。
岩肌の冷たさ、空の近さ、全身の痛み、浅い呼吸、、、。
生きてるんだなぁ、としみじみ実感した。
限界はとっくに超えていたけど、
一度きりの魔球を投げ込む気持ちでいた。

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4時間後、
一番高い場所にいた―――。
やればできる!
這いつくばりながらも
気持ちは天下を取っていた。

(プロフィール)
矢田和彰
年に3回の海外旅行がモチベーション!
旅するために働く、元バックパッカー営業マン。
世界一周し、これまで訪れた国は72か国。
出張案件目指して今日もがんばってます。