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2015年1月28日更新
はちイラストレーション:山田 詩子














横山秀夫『第三の時効』
『64』や『臨場』などの警察小説で定評がある横山秀夫先生。ミステリー好きを豪語していながら今まで読んだことがなかった同氏の名作を、恥ずかしながら今更読んでみた。
1 行間から伺い知れる刑事達の息遣い
端的で殺伐とした言い回しから生まれるキャラクターのリアリティには目を見張るものがある。本書で捜査に奔走するF県警捜査一課は、「理詰」の朽木が率いる第一班、「冷血」の楠見が率いる第二班、「天才」の村瀬が率いる第三班から構成される。
この作品からはそんな刑事たちの緊迫感溢れる息遣いが聞こえてくる。
2 現代短篇ミステリーの金字塔
連作短篇であることの強みを最大限に生かした作品である。
一人称で描かれる本作は篇ごとに主人公が異なる。読者はその都度見えてくる主人公たちの主観を通して、彼らの内面、F県警内の人間関係、彼らが遭遇する事件を多面的に味わうことが出来る。また、人物や世界感の描写は勿論だが、その中に緻密なトリックを組み込み、短篇とは思えない程のインパクト、余韻をもたらしている点でも他の作家の短篇とは一線を画している。>
3 至高の短篇『囚人のジレンマ』
本作の語り部である捜一課長の田畑は第一から三班を束ねるポストでありながら、排他的で向こう見ずなF県警捜査一課をコントロール出来ないことに悩んでいた。そんな中で起きた全く異なる三つの事件に、それぞれの班が捜査に充てられることになる。
事件3つを同時に追いかける展開の速さの中に登場人物のカラーを出しつつ、しっかりと後味を出している点が素晴らしい。


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