プロがおすすめする社史や記念誌の作り方

社史、記念誌を作る

20年、30年と歴史を積み重ねてきた会社や学校などにとって周年事業は、その価値をアピールする絶好の機会です。長く続けられるということは、それだけ社会から信頼され、必要とされ続けている証。周年を迎えるにあたり、改めて継続できる強さの秘密を分析し、紹介することは、お客様への宣伝、社員への教育に非常に役立ちます。以下は社史や記念誌をつくる意義を踏まえた上で、作る際に役立つ情報です。ぜひ参考にしてみてください。

1.社史や記念誌をつくる意義

A. 文化の共有と継承

過去にどんな成功や失敗をしてきたのか、いわゆるビジネス体験の共有は、自社の果たしてきた社会的価値や役割を社員に再認識させ、会社へのロイヤリティを醸成することに役立ちます。

B. 企業の社会的使命の発信

企業が長年にわたり、果たしてきた社会的責任や使命を社員が再認識するよい機会であると同時に、外部に公表することで、その存在意義を発信することができます。CSRとしても役立ちます。

C. 未来への継承

有用な資料は時が過ぎるにしたがって、散逸してしまいます。社史・記念誌の作成はその資料を収集し、保存することにもつながり、未来へ継承することができるようになります。

2.準備段階で気をつけたいこと

物事を整理するときに役立つ5W1Hで考えてみましょう。いわゆる、なぜ(Why)、いつ(When)、どこで(Where)、だれが(Who)、なにを(What)、どのように(How)です。

なぜ(Why):刊行の目的を定めましょう。なぜ出す必要があるのか?誰にむけて出し、どんな効果を得たいのか?目的がはっきりしないと成果が出にくいので、必ずはっきりと定め、社内コンセンサスをとるようにしましょう。

いつ(When):発刊時期を明確にし、スケジュールを組みましょう。パーティ等の周年事業も行う場合は、その日程との調整も必要です。作る内容やボリュームによって制作期間は変わりますが、資料収集の時間を考慮すると少なくとも1年はかかると想定しておくとよいでしょう。一般的には2~3年くらいで制作することが多いです。

どこで(Where):資料保存場所や編纂委員会が活動する拠点を決めましょう。資料収集はやってみると意外と手間取ることが多く、貴重な資料だけに散逸しないように保管ルールを定め、保存する必要があります。活動場所は資料保存方法を想定した間取り(棚の数、セキュリティなど)を考慮しましょう。

だれが(Who):タスクフォースとして編纂委員会を作りましょう。一般的に古い資料は散逸していることが多く、資料収集には思わぬ手間と時間がかかります。できれば専任の方を選びたいところです。ただし、編纂委員で編集・執筆・デザインなどすべての作業を行うことは、膨大な量だけに却って非効率になることがあります。編纂委員は資料収集や編集の基本方針、チェックなど、内部の方しかできない事柄に集中するとよいのではないでしょうか。編集プロダクションやデザイン会社など外部のプロの知見を活用し、編纂した方が、一般的にいい作品になることが多いものです。

なにを(What):どのような本にしたいのか、いわゆる性格づけ(内容・表現・形態)をします。いわゆる資料本としての価値でつくる場合は、分厚い文章多めの本になるでしょうし、従業員など多数の人に読んでもらいたいなら、デザインや構成を相当工夫する必要があります。目的に応じた内容・表現・形態でないと意味がないので、慎重に吟味するとよいでしょう。

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どのように(How):
STEP1:上述したようにまずやるべきことは編纂委員会を結成することです。編纂委員会事務局も置き、まずは委員会で編集方針、発刊時期、スケジュールを定めます。

STEP2:編集方針に従い、仮目次を作成した上で資料収集を行います。現役の方だけでなく、リタイヤされた方々、関係各所に問い合わせをし、協力いただくので、考えている以上に時間がかかるものです。スケジュールには余裕を見ておいた方がいいでしょう。また、貴重な資料をお預かりするため、保存方法や借用の証明書など、細かな手順を定めてから行いましょう。紛失は絶対に許されません。

STEP3:いよいよ原稿作成に入りますが、一般的に記念誌や社史の構成は本文の他に巻頭に置かれるイラストや写真などグラフィカルなページである口絵、本文で紹介された内容を補足する資料編、最後に年表というのが多いようです。もちろん編集方針によって構成はまちまちなのですが、基本の形ということです。収集した資料を基に原稿作成を行いつつ、デザインの基本フォーマットも作成しましょう。あまりにも原稿作成を優先して進め過ぎると、写真やイラストをそこそこ載せるようなタイプでは、後工程でデザインとの調整が大変になることがよくあります。最近の傾向として、昔のような文字ばかりの本ではなく、写真を多用した雑誌に近いタイプが主流になっていますので、誌面デザインにも注力しましょう。また、デザインの中でも表紙を含む装丁は、デザイナーのレベルにより仕上がりに大きな差が出ますので、デザイン発注の際は、デザイナーの実績をよく確認して依頼するようにしましょう。

STEP4:原稿とデザイン・画像・イラストを合体させます。この作業はプロに頼む方がクオリティを高くできますので、デザイン作成会社に依頼した方が無難です。できあがったものを確認(校正)し、修正するところは直して校了後に印刷します。検査し問題なければ発刊し、配布します。
 

3.映像との組み合わせ

最近は印刷した本タイプだけでなく、映像や写真画像、E-BOOKなどを収録したDVDを配布するデジタルタイプも増えています。映像は一瞬で多くの情報を伝達し、臨場感など文字では伝えきれないことを表現できますので、本とDVDを一緒に作成する会社も増えてきています。特に社長や社員のインタビューを映像にすると、文字で見るより分かりやすく伝わるので、おすすめといえるでしょう。
 

最後に

社史や記念誌の作成は、長年営々と信頼を勝ち取ってきた企業・団体のみが許される特権です。「継続は力なり」とはまさにその通りで、作った歴史は「信頼できる会社・団体」という証なのです。新興企業には真似できないことですので、そんなライバルたちに差をつけるためにも、ぜひ上記を参考にして社史や記念誌の制作をしましょう。会社の“格”があがるチャンスです。

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