買い物をしている人の心理を分析してみよう
普段、私たちは企業という組織の一員としてモノを売る立場にありますが、同時に個人としては一消費者でもあります。売る立場と買う立場、その両方になっているのですから、買う人の心理を売る立場で考えれば効果的な販促ができそうなものです。
しかし、実際はどうでしょうか?モノを買うときの心理って、自分でもよく分かっていないのが現実ではないでしょうか。人は複雑な心理を経て購買の決断をしています。この複雑な購買心理を知ることは、販促の大きな力になります。
パンフレットにしろ、DMにしろ、人がモノを買うときの心理を活かせれば、もっと効果的な販促ツールにすることができるでしょう。人が商品を買うとき、どのような心理が働いているのでしょうか?
人間がモノを買う二つの購買心理
人が“買う”という行動に至るまでの心理は、大きく二つに分類されています。一つが「消費者情報処理」、もう一つが「手段-目的の連鎖」と呼ばれているものです。その心理メカニズムは次のようなものです。
・消費者情報処理
いくつかの商品情報を比較検討し、その中から最適なものを選ぼうとする心理メカニズムを消費者情報処理といいます。この購買心理は、カタログを集めて比較検討するといった意識的な行動だけに限りません。人はこの心理作用を日常生活の中で当たり前に行っています。
例えば小腹がすいてちょっと軽食をつまみたいとき、私たちにはいろいろな選択肢があります。コンビニの棚にはお菓子や健康機能食品、パンなどが並んでいます。同じような商品を自動販売機から購入することもできます。これらたくさんの商品の中から、味や価格、そのときのシチュエーションなどで比較検討し、今の自分に最適な商品を選んでいます。
消費者情報処理とは、情報処理者である人間の機能がもっともシンプルに働いた購買心理メカニズムといえます。
・手段-目的の連鎖
「手段-目的の連鎖」とは、ある目的に対する手段として商品への欲求が起こり、そこから購買心理が確立されていくメカニズムをいいます。
例えば、仕事の合間で気分転換するために軽食への欲求が起こり、購買を決断するといった心理作用です。手段-目的の連鎖には、目の前の目的の先には、また別の目的があるという性質があります。仕事の合間で気分転換するという目的の先には、仕事の能率を上げるという目的があり、さらにその先には良い結果を出したいという目的があるのかもしれません。このように手段-目的の連鎖では、目的はどこまでも連鎖していくと考えられています。
購買心理を販促ツールに活かすには?
この二つの購買意志決定メカニズムに対して、それぞれ有効な販促ツールを作るにはどうすればいいでしょうか?
・消費者情報処理の心理メカニズムに有効な販促
消費者情報処理の心理メカニズムに訴求するなら、他社製品との比較で自社製品の優位性を訴える、いわゆる差別化戦略が効果的と考えられます。パンフレットやDMでは、他社製品にはない機能や品質の良さ、価格の安さや保証の充実などを訴えましょう。自社の優位性を示す数値などを記載するのもいいかもしれません。使用経験者による推薦の言葉も効果的です。人が消費者情報処理によって購買意志決定をするときは、合理的な判断をしようとします。従って、販促ツールも合理的判断を促す、論理的訴求が有効です。
・手段-目的の連鎖の心理メカニズムに有効な販促
手段-目的の連鎖の心理メカニズムに訴求するなら、製品がもたらす効果や満足感を訴える戦略が効果的と考えられます。その製品を使ったときのイメージや気持ち、優越感などをパンフレットやDMに盛り込むといいでしょう。製品を使う場面を想定した、シーン訴求もこの心理メカニズムには有効です。また、自社が市場シェアの多数を占めているなら、市場全体の需要を増やすアプローチを考えてもいいかもしれません。
手段-目的の連鎖はニーズを満たそうとする心理メカニズムなので、連鎖のつながりを探ることで新たなニーズを見つけ、新たな市場開拓につながる可能性もあります。消費者情報処理と手段-目的の連鎖は、それぞれが完全分離して働くわけではありません。二つが組み合わさったり、入れ替わったりしながら購買の意思決定をしています。人間は買うという行為を、このような複雑な心理メカニズムで行っています。
今度、買い物をするときは自分の購買心理を意識してみてはいかがでしょうか。販促アイデアのヒントを得られるかもしれませんよ。