
デジタル優勢、売り上げ右肩下がりの紙はオワコンなどと言われていますが、データ消失やサービス終了のリスクのあるデジタルメディアが必ずしも優れているとは言い切れません。それぞれの強み・弱みと実際の動向からメディアについて考えます。
紙(アナログ)メディアの特長
強み・得意な点
- 所有感と永続性:一度購入すれば物理的に所有でき、長期的に保存・閲覧が可能。他者の都合に依存せず、将来にわたって「読む」「見返す」ことができる。
- 目や身体への負担が少ない:長時間読んでも目が疲れにくく、紙の質感が読書体験を豊かにする。
- 記憶定着に有利との研究:印刷物での読書は、画面よりも記憶への定着率が高いとする研究がいくつか存在する(例:ノルウェーのスタヴァンゲル大学の調査)。
- 文化資産としての価値:図書館や博物館など蓄積される知識のアーカイブとしても機能しやすい。
苦手な点・課題
- かさばる・重い:持ち運びが不便。収納スペースを取る。
- 検索性が低い:全文検索やキーワード検索ができない。
- 更新ができない:誤植や情報の変化に対応できない。
事例
- 民家や神社などから歴史的な資料が見つかることがしばしばある。作者が遺したノートや写真は後世に発見される可能性があるが、閲覧する手段が無かったりサービス終了などでデジタル文書や画像が後世に発見されることは考えにくい。
- 2024年10月にイギリスの書店協会が行った調査によると、実店舗で本を購入すると回答したのはZ世代が49%、ミレニアル世代が56%とほぼ半数。40代~50代ぐらいのX世代は37%、1946年から64年生まれ(ベビーブーマー世代)は31%となり、若年層はその上の世代よりも書店で本を購入する可能性が高いということがわかった。
デジタルメディアの特長
強み・得意な点
- 大量の情報をコンパクトに管理:数千冊分の書籍や資料も1台の端末に収まる。持ち運びが容易。
- 検索・ハイライト・共有が簡単:全文検索、しおり、マーカー、SNS共有など、学習・業務との親和性が高い。
- 更新・修正が可能:リアルタイムで情報を修正・追加できる。
- 多様な表現が可能:動画・音声・インタラクティブコンテンツとの組み合わせができる。
苦手な点・課題
- 視覚疲労・集中力の低下:長時間のスクリーン閲覧は目や脳に負担をかけ、集中が続きにくいという指摘も。
- データ消失・サービス終了のリスク:サービスの終了やDRM(著作権保護)の仕様変更で、購入済みコンテンツが読めなくなる可能性も。
- 再生環境の依存性:フォーマット(PDF、EPUB等)や対応機器(OS、リーダーアプリ)などに左右される。
事例
- 2009年7月17日、アマゾンは再版権を持たない出版社が販売していた電子書籍2点、ジョージ・オーウェルの『1984年』と『動物農場』の販売を停止し、ユーザーがすでに買っていた本についてもKindleから無断で削除。のちに料金を払い戻すこととなった。
- 旧型端末やアプリのサポート終了や、作者が事件を起こして配信停止など、購入した電子書籍が読めなくなったとの声が度々見られる。
- 音楽・映像のストリーミングやサブスク同様、「利用権の販売」であり「所有ではない」点を懸念する声もある。
まとめ
紙とデジタルは、一方が優れているというよりも用途による適材適所で使い分けることが理想的です。たとえば、
- 幅広い人たちに周知したい:パンフレットやチラシにwebサイト、SNSを活用する。
- 情報に資料的価値を付加する:紙のカタログや社史・記念誌を作成する。
- 一時的な閲覧や手軽さを重視:webサイト、SNSを活用する。 など。
どちらも社会に欠かせない情報インフラであり、安易な二者択一ではなく、それぞれの特性とリスクを理解した上での選択と活用が求められます。
